原発運転差し止め判決

先週の24日金曜日、金沢地方裁判所で、今月15日に営業運転はじめたばかりの、北陸電力志賀原子力発電所2号機の運転差し止めを命令する判決が出ました。ニュースを見ていたときテレビのスピーカーから、勝訴の決定が示された裁判所前であがる「ウソー!」とか「マジかよ〜!」という声が聞こえてきました。それが、報道関係者の声なのか、それとも、原発賛成派、反対派のどちらの声なのかははっきりしませんでしたが、おそらく、誰もが意外に思える判決だったのだと思います。

運転差し止めの理由は、早い話が、地震に耐えられない恐れがある施設だから、ということだそうです。

日本でおこる地震は、プレート境界部で起こる海溝型地震と、岩盤と岩盤の切れ目である断層が原因で起こる地震の2つに分けられるそうです。その発生が心配されている東海・東南海・南海地震は前者で、平成7年1月に発生した兵庫県南部地震などは後者にあたります。また、今回、志賀原発2号機の運転差し止めに影響したのは、後者の断層型地震です。

大きな地震がおこると、地下の岩盤が壊れます。一般に、その際できた岩盤の破断面が地表に姿を現したものを、「断層(地震断層)」というそうです。さらに、断層の中でも、今から10万年前以降の比較的最近に活動したことが認められるものを特に「活断層」と呼び、将来も繰り返し活動するだろうと予想されています。現在、存在が確認されている活断層は、「全国活断層分布図」などで紹介されています。それらの活断層付近では、規模の大小や時期はともかく、兵庫県南部地震タイプの地震がおこる可能性がある、ということですね。

上のサイトなどを見ると、日本列島にはかなりの数の活断層があることがわかります。しかしそれらは現在わかっているものだけで、それ以外に未知の活断層がどれくらいあるのかは誰も知らないそうです。約1万年ほど前に氷河期が終わり気候が温暖化してあちこちに川が流れるようになると、それまで地表に顔を出していた断層の上に分厚い土砂が積もってしまいました。また、関東地方に広く堆積している関東ローム層のように、火山から吹き出た物質が分厚く積もっている地域も多くあります。それらの堆積物の下に隠れている活断層の存在を把握するのは、人工衛星をつかった断層探しが行われるようになった現在でもなお、とても難しいことなのだそうです。バースデーケーキが、その下のスポンジケーキで何等分かされていても、分厚い生クリームが塗られていては、そのことに気がつかない。そんな感じでしょうか。

先に紹介した北陸電力志賀原子力発電所がある石川県中部には、邑知潟断層帯と呼ばれる、長さ約44キロの活断層があることが確認されているそうです。したがって、2号機を建設する際もこの活断層による影響が考慮されるべきだったのですが、金沢地裁の井戸謙一裁判長は、「志賀原発2号機の耐震設計は直下地震の想定が小規模すぎ、周辺にある邑知潟活断層地震を考慮していない」と断定し、今回の運転差し止め判決にいたったのでした(昨年3月、地震調査委員会が発表した邑知潟断層帯で想定される地震の規模は、マグニチュードでは7.6でした。兵庫県南部地震の時はM7.3でしたから、0.3の差になります。マグニチュードが0.2違うと、地震のエネルギーは約2倍になるそうです)。

3800億円もかけて作られた原子力発電所が、営業開始10日目で運転停止を求められる。こんなことが起こってよいのでしょうか。まさに、「マジかよ〜!」という気持ちです。まだ1審の段階ですし、電力会社側も控訴するでしょうから、即座にストップというわけではありませんが・・・・・・・。なんだかなぁ〜、とため息の出るようなニュースでした。