"The Great Conspiracy" Barrie Zwicker

didgerido2006-09-11

その晩、家人が寝静まった夜半に帰宅しテレビのスイッチを入れた私は、自分の目を疑いました。ニュースや映画で幾度となく目にしてきたニューヨークの、あの世界貿易センタービルから、濛々と煙が上がっています。その映像の背後では、東京のスタジオから発せられる矢継ぎ早な質問に答えるNHKワシントン支局長(当時)の手島氏の声が流れていました。しばらく両者を見聞きしているうち次第に事情が飲み込めてきた私は、隣で寝ている妻を起こし、ほとんど一睡もせず、NHKとCNNを交互に見比べながら朝を迎えました。その時点ではすでに、国内外のメディアともに、前夜に起こったその出来事に対して「同時多発」また「無差別」の評価を定着させ、「事件」は次第に「戦争」として捉えられはじめていました。その素早さ、イラククウェート侵攻が「中東戦争」ではなく「湾岸戦争」に位置づけられたあの時と比較にならないほどのメディアの素早さに鳥肌が立ったのを、いまも鮮明に覚えています。
あれから5年の間、この事件に対してはさまざまな検証や評価がなされてきました。中には憶測の域を出ない情報に基づいた興味本位なものもありました。ただ、それらを通じて、また、その後の世界や自分たちを取り巻く社会の変化をつぶさに思い返してみると、将来の歴史家たちの評価を待つまでもなく、"9.11"が歴史の大きな転換点になったとは考えてよいように思われます。
いわゆる"9.11"事件に対していち早く疑問の声を上げた人に、カナダのドキュメンタリー作家バリー・ズヴィッカーという人がいます。この人が作った"The Great Conspiracy: The 9/11 News Special You Never Saw"という70分に及ぶ作品がYouTubeで閲覧可能です。"The Great Conspiracy"という題名を「大いなる陰謀」と直訳しましたが、原題は明らかに、ローマ帝国支配下の(現在の)イギリスでおこった史実になぞらえたもので、あまり「conspiracy/陰謀」という単語に囚われてしまうのは良くないかもしれません。番組の趣旨は、アメリカとアメリカ側に属する国のメディアが発してこなかった"9.11"事件に関する疑問点を指摘し、その疑問に対する答えを探し出そう、というものです。番組は英語ですが、ズヴィッカー氏の話しぶりはとても平易で内容に即した挿入映像も豊富ですので、高校卒業程度の英語力しかない私にも、おおよその要点は容易に理解することができました、正直、ウゥ〜ンそうかなぁ?ってな部分もあったけど。
大いなる陰謀①(YouTube)
大いなる陰謀②(YouTube)
大いなる陰謀③(YouTube)
ズヴィッカー氏と彼の仕事に対する評価が大きく分かれているのは事実。ただし、「テロとの戦争(War on Terrorism)」という概念を広く定着させることが、アメリカが自国民と世界をコントロールすることを容易にした、という氏の指摘も一面の真理ですよね。2005.09.11以来、先進自由主義陣営の住人たちは、新たな恐怖の中で暮らすようになりました。その恐怖は実在するのか。実在するとすれば、それを作ったのは誰か。実在しないとすれば、あたかも実在するかのように見せたがってるのは誰か。敵か、それとも、味方か。敵は敵の顔をしているのか。味方は味方の顔をしているのか。
とかなんとか書いている最中、FMラジオから、こんな歌が聞こえて来ました。
遠く遠く」 by Asian2 (プロモーションビデオ)
ラップって柄じゃないけど、鬱々と5年前のことを思い出していたら、歌詞と歌の上手さが妙に印象に残りました(間奏部のストリングスはちょとダサいかな)。"What's goin' on?" いま、何が起こってる、マーヴィン!?