#158 "Like a Rolling Stone"

転がる一個の石のように
"Highway 61 Revisited" 1962

Highway 61 Revisited (Reis)
= ENGLISH =

その昔 あんたは相当にすばらしく着飾っていて
乞食らにひと財産の中の10セント硬貨を放り投げてたよな
みんな言ってた 「気をつけなさいお嬢さん 落ちるときはあっという間ですよ」って
みんなが冗談を言ってるのだと考えてたんだよな
あんたはあざ笑うのが常だった
そこらにたむろするそんな人間たちを
今じゃあんたは大きな声で話さない
今のあんたは自信がなさそうだ
次の飯をちょろまかすことにさえ

どんな気分だい
どんな気分だい
家がないってことは
自分が完全に忘れ去らてるみたいだってのは
転がる一個の石みたいだってのは

あんたは首尾よく最高の学校に行きなさったんだよね ミス・ロンリー
だけどあんたはそれが授業料を払うって行為に過ぎなかったことを知ってる
宿無しで生きてくような術は誰も教えてくれなかったってことも
今になってやっと やつらがやってきたことを自分もやらなくちゃって気づいた
あんたは 決して歩み寄ったりしないって言ってた
得体の知れない浮浪者なんかに だけどやっと気づいた
そいつは言い訳を売り物にしてるじゃないんだ
あんたは彼の両目の中の空ろを凝視しながら
自分と取引に応じたいかどうか尋ねてる

どんな気分だい
どんな気分だい
ひとりぼっちで
家もないってことは
自分が完全に忘れ去らてるみたいだってのは
転がる一個の石みたいだってのは

あんたは落ち込んだ顔に振り向きもしなかった
手品師や道化師たちの
彼らがみんなしてやってきて あれこれの業を見せてくれたときに
それが心ない行いだったなんて あんたには理解できなかった
自分が嫌なことを他人にやらせるべきではなかったんだよ
あんたは外交官といっしょによく金ぴかの馬に乗ってた
肩にシャム猫を乗っけたやつさ
でもあんたが気づいたときに
そいつはあるったけを盗み取ってトンズラしてたっけな

どんな気分だい
どんな気分だい
ひとりぼっちで
家もないってことは
自分が完全に忘れ去らてるみたいだってのは
転がる一個の石みたいだってのは

教会の尖塔におわす王女様と身なりの良い人たち
彼らは飲み かつ 万事順調だと考えながら
ありとあらゆる豪華な贈り物やらなにやらを交換し合ってたけど
そろそろダイアモンドの指輪は はずして質入したほうが良さそうだ
あんたは面白がってた
ぼろきれをまとったナポレオンと彼の話しっぷりを
彼の元に行きなさい やつが呼んでるし あんたには断れないはずさ
いまやあんたは何も持っていない 失うものなど何もないんだから
もうあんたは誰の目にも留められず 隠すべき秘密などないのさ

どんな気分だい
どんな気分だい
ひとりぼっちで
家もないってことは
自分が完全に忘れ去らてるみたいだってのは
転がる一個の石みたいだってのは


この『転がる一個の石のように』は、数あるディランの歌の中でも、最もよく知られた作品の1つだと思います。「奢れる者は久しからず」の平氏は一族そろって転落したから"Rolling Stones"だったけど、"A Rolling Stone"な身は、彼らよりずっと心細そうですね。