2.4%

26万人のうちの6341人。41.3人に1人、2.4%。1992年から2005年3月までの間に骨髄バンクにドナー登録した人と実際に骨髄を提供した人の数だ(「骨髄移植推進財団」発表資料)。骨髄の提供ができる20〜54歳までの日本の総人口(2005年)はおよそ6200万人だから、うちドナー登録している人の割合は約0.42%ということになる。白血病再生不良性貧血、骨髄異形成症候群などの患者さんが自身と同じ型(HLA型)の白血球を持ったドナーを見つけるためには、30万人の骨髄提供者がいればよいそうだ。0.42%を0.48%に上げるだけで、あと4万人ドナーが増えるだけで、目標は達成できる。自問してみる。
さ、どうする?
ドナー登録するか?
方法は簡単だ→【「チャンス」Flash版】。最寄の献血施設や保健所でたった2ccの血液を抜き取るだけでいい。時間もかからないから職場の昼休みや営業中の空き時間にだってできるし、ほとんどの献血ルームは土日もオープンしてる。その気にさえなれば、今すぐ僕は、0.48%の一員になれる。
さ、どうする?
ドナー登録するか?
ドナー登録をすませた時点で、僕はごく少数派の善意の日本人になれたことに、けっこうな満足感を得ていると思う。でも、もちろん、それは始まりに過ぎないのだ。2.4%の確率で、それは自分の身にも起こりうる。
HLA適合患者が見つかったら僕は、家族の同席を得て、骨髄提供の最終意思確認が求められる。ここで"Yes"と言ってしまったら、もう後戻りはできない。被提供者は免疫状態をニュートラルにするなどの、文字通り命がけの準備に入ることになるからだ。
最終意思確認に先立って行われる精密検査を経て、僕は4日〜1週間ほどの入院生活を送ることになる。骨髄採取は全身麻酔をしたうえで、腰の骨に数回針を刺すことで行われる。献血ルームでもらってきたパンフレットでは、そうした採取の方法や採取後の痛みや傷などについてフェアな情報提供が行われている。献血と同じ程度、というわけには、もちろんいかない。でも、僕が提供した骨髄で、急性骨髄性白血病の患者さんの40〜85%、急性リンパ性白血病患者の40%、慢性骨髄性白血病患者の23〜68%が、その後5年間たっても生きていることができる。
さ、どうする?
ドナー登録できるか?
できない。もし自分が97.6%の安全なドナーになることが保障されるなら今すぐにでもドナー登録するだろうが、善い心の持ち主になれたと思い込めるだろうだけのために、2.4%のリスクを受け入れることができない。
リスク?
結局僕にとって2.4%は、チャンスではなくリスクなんだな。自分は何の苦痛も心配もない場所に身をおいて、他人の苦痛や心配事を見物しようとしてる(これまでもずっとそうだったんだけど)。
そんな自身の卑しさに舌打ちしながら、「チャンス」と題されたパンフレットをさっき、ゴミ箱に捨てました。バイバイ!